新しいデスクトップの可能性に注目するKDE4開発者たち

2006/03/15 - 18:26

NewsForgeで2月に掲載されたKDE4の現状を紹介する記事
同じくKDE4の状況をリポートした昨年のこの記事はjapan.linux.comでこの訳文が読めたが、今回はスルーの様子。。。
長文だけど、ざっと訳してみる。

新しいデスクトップの可能性に注目するKDE4開発者たち

KDEの来たる次期メジャーバージョンの開発に携わる開発者たちは、KDE4でユーザーが現在より便利かつ簡単にファイルやデータにアクセスできるような機能やソフトウェア連携を提供したいと考えている。
アイデアとしては、

  • パーソナルな情報を(システムの制約を受けずに)全般的に利用できる(?)
  • ユーザーの振舞いに反応するデスクトップ環境

といった感じだ。

KDEの開発者でKDE米国公式代表のIan Geiserは、KDE4はおそらく2006年末にリリースされるだろうが、内部の議論の行方によっては2007年の初頭までずれ込むかもしれない、と語る。
KDE開発者Till Adamは、開発者たちはまだKDE4のビジョンをまとめて、それらが相互にどう噛み合うか試行している最中であると語る。
「我々はこれらの技術がどのように完成され、どのように相互に能力を高めるのか、まだわからない」Adamはこう続ける。
「しかし、何事も最初はこんなものだ。それぞれのチームの方向性の明確なあらわれだ。我々はどこへ向かうのか意見をひとつにまとめていく」

より洗練されたハードウェア統合

KDE4にはSolidによってより洗練されたハードウェア統合がもたらされることになるだろう。SolidはKDEアプリケーションに利用されるレイヤー(層)で、基礎をなすプラットフォームとハードウェアと連携して動作する。このSolidプロジェクトでは、アプリケーションが他のOSでも簡単に動作するようにAPIも用意される。

Solidを牽引する開発者Kevin Ottensによると、このプロジェクトの主な目標は、KDEに現在以上のレベルのハードウェア自動認識・相互機能をもたらすこと。現在でもKDEはCD-ROMやUSBフラッシュメモリなどは正しく扱えるが、プリンタやネットワークアダプタなど一部機器では正しく認識しなかったり操作できない場合がある。
これまでリリースされたKDEにはこのようなインターフェイス層が用意されておらず、各アプリケーションの開発者がそれぞれ個別にユーザーのハードウェアとの相互機能を設定していた。

ユーザーはSolidによって、たとえば最近のネットワーク設定を記憶しておいて、使用可能な無線LANのベストな設定の提案を受けるなどといった事が可能になるだろう。
Solidでは、いくつかのハードウェアは認識できなかったり予期しない動作をすることもあるだろうが、KDEユーザーが直面しているハードウェアにまつわる多くの問題が解決されるだろう、とOttensは言う。
現在計画されているSolid Knowledge Baseでは、ハードウェアに関するユーザーの報告を集約して、他のユーザーがハードを購入する際に参考にしたり、開発者が問題の所在を確認する事ができるようになるだろう。

情報の統合

注目を集めるもうひとつの分野は、AkonadiKitchen Syncなどのパーソナルな情報の管理(PIM)だろう。

プロジェクトリーダーのTill Adamによると、Akonadiプロジェクトはアプリケーションにデータとメタデータを含有させるフレームワークだ。
Till AdamはKDE-PIMプロジェクトのKMailのコア・デベロッパーでもある。
Akonadiは、インターネット上のさまざまな情報とeメールを一連のアプリケーションで扱おう、という概念に基づいている。
大方のユーザーは、開発者が(Akonadiに)リンクしたアプリケーションを通じてAkonadiに触れることになるだろう。
KDE開発者たちは出来るかぎり標準の作法に沿うように意識しているので、ほとんどのアプリケーションがAkonadiライブラリとリンク可能になるだろう、とAdamは言う。

彼はまた、パーソナルな情報を扱うプロジェクトの開発者は常に、独自に読み込まれるコンタクト情報用のライブラリやデータを他のアプリケーションのデータとシンクロする際の不自由さに直面しているので、他のデスクトップ環境たとえばGNOMEのeメールクライアントアプリケーションEvolutionにもAkonadiは有用だろう、と語る。

「他のフリーデスクトッププロジェクトと共有できるように、我々はAkonadiをなるべくサービスのようにしようと考えている」
「KDE4が真に進化するためには、ユーザーがデータにより柔軟かつ多様にアクセスできる手段を提供しなくてはならない、と我々は考えている」Adamはこう語る。

KDE4では、KitchenSyncという直感的なデバイス同期アプリケーションもまた、ユーザーによりよいデータアクセスの手段を提供する。
プロジェクトリーダーのCornelius Schumacherは、KitchenSyncはパーソナルな情報をより迅速に扱うためにAkonadiを利用することになるだろう、と語る。
Schumacherによれば、OpenSyncプロジェクトを基とするKitchenSyncは現在、アプリケーションに”アウト・オブ・プロセス”プラグインのサポートを加える作業中だ。
E-メールクライアントThunderbirdのように、KitchenSyncからのデータへアクセスを要求するアプリケーションは、プラグインを用いることでデータ取得がより簡単になるだろう。

ユーザーのエクステンション(能力拡張ツール)として

もうひとつ興味深いプロジェクト、ユーザーの望むデスクトップ環境の実現を目的とするPlasmaについて。
プロジェクトを率いるAaron Seigoは、デスクトップソフトウェアはこれまで、ユーザーとのインタラクション機能、ユーザーにとってシンプルな動作、アクセスの容易さ、といった面の進展が遅れていた、という。
「(我々は)じっとして進歩のないシステムから脱する。そして、よりユーザーを意識したワークスペースを目指す。これは、デスクトップを真の意味で人々の作業場として使えるようにする試みだ」。

この壮大なアイデアは計画を策定中で、Seigoが言うにはKDE4に何らかの形で盛り込まれるだろうが、今後数回のKDEリリースを経て開発されていくことになるだろう。

計画中のアイデアの内容は、ユーザーが日頃コンピューターを使用している間に、最も頻繁に実行するタスクを認識して、必要なアプリケーションやデータへのアクセスを迅速に提供する、というものである。

Seigoはまた、KDE4ではパネルの活用を増やし、デスクトップスペースの用途を拡げることを指摘した。
たとえばある目的に沿ってファイルを集める為には複数のフォルダを開かなければならないが、新しいデスクトップでは画面の端に収まっている一連のパネルアプリケーションを使う。マウスカーソルを上に持っていくかクリックすると現れ、ファイルをグループ化して、従来のアイコンとファイルメニューからなるデスクトップシステムよりもファイルにアクセスしやすくなるだろう、とSeigoは語る。

ウィジェットが前面そして真ん中へ

Seigoは、ウィジェット(デスクトップ上のシンプルで小さなアプリケーション)の使いやすさと機能を増すこともまた、デスクトップ全体の使いやすさにつながる、と言う。
MacOSXのようにウィジェットがダッシュボード・スペースの範囲内でだけ動作し、ユーザーが終了させると隠れてしまうのではなく、パネルの中で動作し、ユーザーが呼び出して他のアプリケーションと同様に使えるようにしたい、とSeigoは考えている。

これらの数々のアイデアは、SuperKarambaKicker、そしてKDesktopといったプロジェクトと同様にKDE-Lookコミュニティの成果から発展したものだ、とSeigoは語る。
SuperKarambaは現在までKDEをカスタマイズするアプリケーションの一つだったが、KDE4ではシステムの中に包括されて開発者に提供される。

Seigoは、KDEは今後さらなる拡張性、カスタマイズしやすい(デスクトップ)スペース、そしてスケーラブル・ベクター・グラフィック(Scalable vector graphics[SVG])、Trolltechの開発ツールキットQt、開発者向けのJavaScript、これら3種のアプリケーションの活用、を目指すと見ている。
彼はKDE-Lookのような、開発者がウィジェットか他のタイプのデスクトップ拡張アプリケーションを提供できるサイトを立ち上げる計画をしている。

Geiserによれば、数々の拡張機能でFirefoxがその人気と使いやすさを増してきたように、環境が拡がるようにすることは、KDEそしてユーザーにとって良いことだろう。より多く、より新しい技術がサポートされたソフトウェアや環境は、開発者の意欲を刺激してKDEにより多彩な機能のアプリケーションをもたらすことになるだろう、と彼は言う。

開発者をひきつける

Geiserが言うには、KDEを更にモジュール化することで、開発者は拡張された機能を利用してデスクトップを作り、開発がより速くなる。

いままでのKDEと次のKDE4との違いは、Windows3.1からWindows95の飛躍と比較することができる。
この2つのリリースの間でMicrosoftのAPIはWin16からWin32へと変わったが、これは使いやすかったため開発者により適していた。
開発者がKDEに追加・変更を加えられる環境を用意することは、自らKDEに手を加えるのと同様に重要である、とGeiserは言う。

GeiserはKDEを”完全なるプラットホーム”と呼んだ。MacOSやWindows Vistaと同様に。
プラットホームにユーザーたちが参加し、便利さと拡張性をより増すことで、さらに参加するユーザーが増える。彼はそう見ている。

Geiserはこう語る。
「KDEはLinuxデスクトップの問題を解決しつつある。今われわれは開発者が土台として頼りにできるものを作らなければならない」

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